会社の拠点が1か所だけなら、ハザードマップを1回開けば所在地の想定は確かめられます。本社のほかに工場や倉庫、営業所、工事の現場がある会社では、拠点ごとに地図を開き直し、結果を書き留めて比べる作業が必要になります。
当サイトの拠点リスク確認は、この作業を1つの画面にまとめた道具です。拠点を最大5か所登録すると、地震・洪水・内水・土砂災害・津波・高潮の想定が一覧表に並びます。この記事では、操作の手順と表の読み方、BCPに書き写すときの注意を整理します。BCPの基本の2つ目の段階「自社の所在地で起こり得る災害を調べる」で使うことを想定しています。
拠点を 登録して、 一覧表を 作る
操作は次の順番です。
- 拠点の名前と住所を入れて「追加する」を押す。 名前は「本社」「第2倉庫」のように、社内で通じる呼び方にします。住所は、県名を省いて入れると神奈川県の中で探します
- 地図から追加することもできる。 住所が決まっていない現場や、敷地の広い工場の建物の位置などは、地図をクリックして「この地点を追加する」を押します
- 必要な拠点がそろうまで繰り返す。 登録できるのは5か所までです。それより多い場合は、使わない拠点を削除してから追加します
- 一覧表を保存する。 「資料を印刷する」で作成日入りの資料と表を印刷でき、「CSVで保存」で表計算ソフトで開けるファイルにできます
登録した拠点の名前と位置は、利用しているブラウザの中にだけ保存され、当サイトには送られません。住所は位置を調べるために国土地理院の住所検索に、拠点の緯度・経度は国土地理院と防災科学技術研究所の公開APIに送られます。共用のパソコンで使ったときは、終わったら「すべて消す」を押します。
一覧表の 各行の 読み方
一覧表は、拠点が横に並び、想定の項目が縦に並ぶ形です。表1に、行の内容と、もとにしているデータをまとめました。
| まとまり | 行 | もとにしているデータ |
|---|---|---|
| 地震 | 震度6弱以上・震度6強以上の揺れ(今後30年の確率) | J-SHIS 確率論的地震動予測地図(2024年版・平均ケース・すべての地震) |
| 地震 | 地盤の揺れやすさ(表層地盤増幅率) | J-SHIS 表層地盤 |
| 水害 | 洪水(想定最大規模) | ハザードマップポータルサイトの地図の色から読み取った目安 |
| 水害 | 内水 | ハザードマップポータルサイト(横須賀市の一部・平塚市・綾瀬市)、川崎市のオープンデータ。そのほかの市町村は配信なしとし、国土数値情報の低位地帯を参考に添える |
| 水害 | 洪水(計画規模)・0.5m以上の浸水が続く時間・家屋倒壊等氾濫想定区域 | ハザードマップポータルサイトの配信地図(想定最大規模の洪水と同じ出どころ) |
| 土砂災害 | 警戒区域・特別警戒区域 | ハザードマップポータルサイトの地図の色から読み取った目安 |
| 海からの浸水 | 津波、高潮 | ハザードマップポータルサイトの地図の色から読み取った目安 |
| 海からの浸水 | 高潮:0.5m以上の浸水が続く時間・家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流・越波) | 神奈川県「高潮浸水想定等のGISデータ」(CC BY) |
| 道路 | 近くの冠水注意箇所(500m以内) | 国の一覧と市の資料をもとに、当サイトで位置を確かめた箇所 |
| 確かめる先 | 市区町村のハザードマップ | 各市区町村が公開しているハザードマップへのリンク |
当サイト「拠点リスク確認」の画面の表記と、J-SHIS(防災科学技術研究所)、ハザードマップポータルサイト(国土交通省・国土地理院)、道路冠水注意箇所マップ(関東地方整備局)をもとに編集部作成
表の左端には黄と赤の帯が付くことがあります。黄は「注意が必要」、赤は「特に注意が必要」の目安です。帯がないからといって、その災害が起きないということではありません。
揺れの 確率と 地盤
「震度6弱以上の揺れ(今後30年の確率)」は、その地点が今後30年のうちに震度6弱以上の揺れに見舞われる確率です。※1※1指標の説明は用語集にもあります。県内の多くの地点で震度6弱以上の確率は高いため、拠点リスク確認ではこの行に色の帯を付けていません。震度6強以上の確率が、J-SHISの地図のいちばん上の区分(26%以上)にあたるときだけ、黄の帯を付けています。地震調査研究推進本部の全国地震動予測地図は、30年の確率が6%、26%であることは、ごく大まかには、それぞれ約500年、約100年に1回程度その揺れが起こり得ることを意味すると説明しています。
「表層地盤増幅率」は、地震の揺れが「工学的基盤」と呼ばれる地下の層から地表に伝わるときに、揺れの最大の速さがどれだけ大きくなるかを表す値です。防災科学技術研究所の説明では、増幅率が1.2の地点と2.4の地点に同じ地震波が入った場合、2.4の地点の揺れの最大の大きさは2倍と考えることができます。同じ市内でも、地盤によって揺れ方が異なることが分かります。
洪水の 時間と 深さ
洪水の色がかかる地点では、想定最大規模の浸水の深さのほかに、次の3つも一覧表に出します。どれも、国と県が公表している洪水浸水想定区域図を、ハザードマップポータルサイトの地図から読み取ったものです。
- 洪水(計画規模):河川整備の目標とする雨による浸水です。想定最大規模に比べて発生頻度の高い雨ですが、雨の規模は川ごとに異なります。ここにも色がある拠点は、想定最大規模ほどの大雨でなくても浸水が想定される場所です
- 0.5m以上の浸水が続く時間:浸水深が0.5mに達してから、その深さを下回るまでの時間です。神奈川県は、0.5mを屋外への避難が困難となり孤立する可能性のある深さとしています。浅い浸水はさらに長く残ることがあります
- 家屋倒壊等氾濫想定区域(氾濫流・河岸侵食):一般的な建築物が倒壊・流出する危険性が高い区域です。この区域では、建物内での待避ではなく、立ち退き避難が必要かを判断することが求められます
浸水が始まるまでの時間は、一覧表に載せていません。国土地理院の浸水ナビは、川の決壊地点ごとに浸水の広がりを計算しています。川ごとの最も早い時間は、数百ある決壊地点のうち最も早いものです。地点によっては、遠い下流の決壊で数分、近い決壊で数時間という結果になり、止水板の設置や移動に使える時間としては読めないことがあります。移動や止水板の設置に使える時間は、浸水ナビで拠点の近くの決壊地点を選んで確かめてください。3つの図の使い方は「相模川・酒匂川の洪水浸水想定と事業所」でも整理しています。
浸水の深さと土砂災害の区域は、国の地図の色から当サイトが読み取った目安で、国や自治体の判定ではありません。区域の境目にある拠点は、表の「確かめる先」にある市区町村のハザードマップで必ず確かめてください。
内水は、 市町村に よって 読み取る 先が 違う
下水道や水路があふれる内水(雨水出水)の地図は、ハザードマップポータルサイトに配信されている市町村が限られています。2026年10月1日に公式の掲載状況一覧で確かめたところ、神奈川県で配信されているのは横須賀市(一部の地域)、平塚市、綾瀬市でした。川崎市は、市が内水ハザードマップのデータをオープンデータとして公開しているので、それを読み取っています。
そのほかの市町村では、内水を「国のポータルに配信なし」と表示します(当サイトでは読み取れないという意味で、市に内水の地図がないという意味ではありません)。「想定がない」という意味ではありません。あわせて、国土数値情報の低位地帯(周辺よりも土地の標高が低く凹んでいる1ha以上の地域。多くは自然排水が困難で、内水氾濫が想定される地域)にかかるかを、地形から見た参考として出します。公式の内水の想定とは別のものなので、市町村の内水ハザードマップで区域と深さを確かめてください。ダム湖と芦ノ湖の湖面にあたる区域は、湖の水深を浸水の深さと読んでしまうため、当サイトでは除いています。※2※2低位地帯:この地図の作成にあたっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の基盤地図情報(数値標高モデル)を使用しました。
冠水注意箇所
拠点から500m以内に、アンダーパスなど冠水に注意が必要な箇所があれば、名前と距離が出ます。載せているのは、国(関東地方整備局)の一覧と市町村の資料から、当サイトで位置を確かめた箇所です。載っていない箇所もあるため、出ないことは近くに冠水箇所がないという意味ではありません。拠点の近くだけでなく、通勤や配送の経路上にないかも確かめます。
拠点どうしを 比べて、 BCPの 判断に 使う
一覧表の価値は、拠点を横に並べて比べられることにあります。比べるときは、次の3つの問いを立てると、BCPで決めることにつながります。
- 同時に被災しそうな拠点の組み合わせはどれか。 同じ川の浸水想定にかかる拠点や、揺れの確率が同じように高い拠点は、同時に使えなくなる前提で考えます
- ほかの拠点の代わりになれる拠点はどれか。 内閣府の「事業継続ガイドライン」は、本社などが使えなくなる場合に備えて、同時に被災しない拠点を代替拠点として確保する必要があるとしています。一覧表で想定が軽い拠点は、その候補になります。ただし、取得できなかった項目がある拠点や、内水を当サイトで読み取れない市町村の拠点は、市区町村のハザードマップで確かめてから判断します
- 拠点ごとに、最初に手を付ける対策は何か。 浸水の想定がある拠点は置く高さの見直し、揺れの確率が高い拠点や揺れやすい地盤の拠点は建物の耐震性と棚・設備の固定、土砂災害の区域にかかる拠点は大雨のときに早めに帰す基準、というように分けます
内閣府のガイドラインは、代替拠点の場所は自社の営業所だけでなく、同業他社や取引先の事務所、社宅、寮などでもよいとしています。登録する5か所に、そうした候補地を含めて比べることもできます。
BCPに 書き写すときの 注意
印刷した表やCSVは、そのままBCPの添付資料にできます。本文に書き写すときは、次の点を添えておきます。
- 作成日。 印刷した表とCSVには作成日が入ります。もとにしている地図や確率は更新されるため、年1回の見直しのときに作り直します
- 目安であること。 表の値は、地図の色から読み取った目安や、確率の計算結果です。取引先や金融機関に説明する資料では、市区町村のハザードマップで確かめた結果もあわせて示します
- 想定の前提。 洪水は想定最大規模の雨、地震の確率はすべての地震を考慮した平均ケースです。個別の地震による被害の見積もりは、県の被害想定で確かめます。読み方は被害想定の読み方にまとめています
所在地の想定が分かったら、次は「どの業務を優先して再開するか」を決める段階です。止まると困る業務を選ぶに進んでください。休業したときに資金が足りるかは、リスクファイナンス判断シートで確かめられます。