取引先の大企業・中堅企業の多くは、BCP(事業継続計画)を作り終えています。サプライチェーンの備えに取り組む企業の約6割は、仕入先に被災のリスクを確かめ、仕入先を複数にしています。中小企業は、取引先から「BCPはありますか」「被災したら供給できますか」と聞かれる側にいます。聞かれたときに答えられるよう、要点を前もってまとめておきます。
- 主な取引先を書き出し、どこから聞かれそうかを確かめる(3章)
- 聞かれたときに出せる要点を、1枚にまとめる(4章)
- 事業継続力強化計画(ジギョケイ)の認定で、公的に示せる形にする(4章)
この記事は、内閣府の「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」(令和7年度、令和8年3月公表)をもとにしています。大企業・中堅企業などに、BCPと防災の取組をたずねる調査です。
- 大企業でBCPを策定済み
- 75.8%
- 中堅企業でBCPを策定済み
- 54.8%
- 仕入先への確認をしている
- 57.7%
- サプライチェーンの取組をしている・検討中の企業
内閣府「令和7年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」図表2-1(p.8)、図表2-13(p.21)、図表2-14(p.22)
調査の 対象は、 資本金の 大きな 会社
この章の要点5,052社に送り、1,759社が答えた調査。資本金の小さな中小企業は対象に入っていないため、結果は「取引先になりうる会社の取組」として読む
調査は、5,052社に送り、1,759社が答えました(回収率34.8%。報告書 p.3)。会社を、業種ごとの資本金と従業員の数で「大企業」「中堅企業」「その他企業」に分けています。「その他企業」も資本金1億円超などの会社で、資本金の小さな中小企業は対象に入っていません(p.4)。※1※1たとえば製造業その他では、大企業は資本金10億円以上かつ従業員301人以上、中堅企業は資本金3億円超10億円未満かつ従業員301人以上です。その他企業は、資本金1億円超3億円以下の会社と、資本金3億円超で従業員300人以下の会社です(報告書 図表1-2)。
この記事では、調査の結果を「取引先になりうる会社の取組」として読みます。中小企業の取組そのものは、認定事業者を調べた中小機構の調査を読んだ「ジギョケイを作った企業は、その後どうしているか」で扱っています。
大企業・中堅企業は、 BCPを 作り、 供給の 責任を 重く 見ている
この章の要点BCPの策定済みは大企業75.8%、中堅企業54.8%。大企業の79.7%が「供給責任を果たし、顧客からの信用を守る」を重く見ている
BCPを策定済みの会社と、策定中の会社の割合は、表1のとおりです。
| 規模 | 策定済み | 策定中を含む |
|---|---|---|
| 大企業 | 75.8% | 87.1% |
| 中堅企業 | 54.8% | 65.9% |
| その他企業 | 52.1% | 60.5% |
内閣府「令和7年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」図表2-1(p.8)、問12(p.54)をもとに編集部作成
中堅企業の策定済みは、前回の調査から9.3ポイント増え、調査を始めてから最も多くなりました(p.8)。
リスクが起きたときの対応で重く見る観点(複数回答)では、大企業の79.7%が「供給責任を果たし、顧客からの信用を守る」を挙げています(p.45)。「取引先との関係性を維持する」は55.4%、「取引先等を支援する」は36.1%でした。
取引先は、 仕入先の リスクを 確かめ、 仕入先を 増やしている
この章の要点サプライチェーンの強靱化に取り組んでいる・検討中の企業では、「仕入先の複数化」と「仕入先への確認(リスクコミュニケーション)」が、どの規模でも半数を超える
サプライチェーンの強靱化(供給網の備え)に「行っている」と答えたのは、大企業で45.0%でした(表2)。中堅企業とその他企業では、「行っていない」が最も多くなっています。
| 規模 | 行っている | 現在検討中 | 行っていない |
|---|---|---|---|
| 大企業 | 45.0% | 25.1% | 26.8% |
| 中堅企業 | 23.2% | 24.4% | 49.6% |
| その他企業 | 21.8% | 17.5% | 56.3% |
内閣府「令和7年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」図表2-13(p.21)をもとに編集部作成。n=1,759、単数回答(無回答は表から省いた)
取り組んでいる・検討中の企業がしていること(複数回答)は、表3のとおりです。「仕入先の複数化」と「仕入先への確認(リスクコミュニケーション)」が、どの規模でも半数を超えています。
| 取組 | 大企業 | 中堅企業 | その他企業 |
|---|---|---|---|
| 仕入先の複数化 | 64.4% | 58.4% | 54.2% |
| 仕入先への確認(リスクコミュニケーション) | 59.0% | 62.5% | 54.0% |
| 企業間の連携・相互支援 | 30.3% | 31.0% | 32.1% |
| サプライヤーへのBCP策定の依頼・指導 | 15.4% | 8.6% | 8.0% |
内閣府「令和7年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」図表2-14(p.22)をもとに編集部作成。n=877、複数回答。対象はサプライチェーン強靱化に取り組んでいる・検討中の企業
仕入先の側から見ると、取引先が被災のリスクを確かめに来ること、代わりの仕入先を探すことの両方が起きています。被災したときの備えを説明できるかどうかは、取引を続けるための材料にもなると考えられます(編集部の読み取り)。
取組は、 親会社や 取引先から 降りてくる
この章の要点BCPを作った(作る予定の)最も大きなきっかけは、どの規模でも「リスクマネジメントの一環として」が最多。中堅企業とその他企業では「親会社・グループ会社の要請」が2割を超える
BCPを作った(作る予定の)最も大きなきっかけは、どの規模でも「リスクマネジメントの一環として」が最も多くなっていました(p.14)。そのうえで、中堅企業とその他企業では「親会社・グループ会社の要請」が2割を超えています。
| きっかけ | 大企業 | 中堅企業 | その他企業 |
|---|---|---|---|
| リスクマネジメントの一環として | 42.6% | 33.2% | 33.3% |
| 親会社・グループ会社の要請 | 10.1% | 20.6% | 22.2% |
| 取引先の要請 | 4.3% | 4.5% | 4.0% |
内閣府「令和7年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」図表2-6(p.14)をもとに編集部作成。n=1,517、単一回答
親会社やグループからの要請で、中堅企業が自社のBCPを作る。その中堅企業が、仕入先にリスクを確かめる。取引先の大企業・中堅企業との取引がある中小企業には、この流れの先で問い合わせが届くことがあります(編集部の読み取り)。
大企業も、BCPを社内に広げることに悩んでいます。リスクへの対応を進めるうえでの課題は、大企業の92.7%が「自社従業員への取組の浸透」、56.2%が「取組時間・人員の確保」でした(p.13)。社内への浸透と人手は、会社の規模を問わない悩みです。
聞かれた ときに 出せる 要点を、 1枚に まとめる
この章の要点所在地の災害の想定・止まったときの連絡・再開の目安・備えの取組を1枚にまとめておく。ジギョケイの認定を受けておくと、国の認定という形で取引先に示せる
取引先からの問い合わせには、次のことを1枚にまとめておくと答えやすくなります。- 所在地の災害の想定。 事業所・倉庫・工場の住所ごとの、揺れ・浸水・土砂災害の想定。拠点リスク確認で調べられます
- 止まったときの連絡。 被災したときに、誰がいつまでに、どの手段で取引先に連絡するか
- 再開の目安。 主な製品やサービスを、いつまでにどの程度まで戻すか。代わりの拠点や協力会社があるか
- 備えの取組。 安否確認の訓練、設備の固定、備蓄など、すでにしていること
問い合わせの答え方は、「取引先にBCPを説明する」にまとめています。自社の仕入先の被災に備える側の考え方は、「仕入先が被災したときに備える」で扱っています。
公的に 示せる 形に する
要点を文書にしたら、事業継続力強化計画の認定を受けておくと、国の認定という形で取引先に示せます。同じ工業団地や協力会の会社どうしなら、連携型の計画で、被災したときの助け合いまで決めておく方法もあります。作り方は「連携事業継続力強化計画」で、認定で使える支援は「事業継続力強化計画の認定で使える支援」で整理しています。
- 主な取引先を書き出す
- 所在地の想定と、止まったときの連絡先を1枚にまとめる
- 再開の目安と、代わりの拠点・協力会社を決める
- ジギョケイの認定を受ける
- 協力会や工業団地の会社と、連携型の計画を考える