大きな地震で自社の工場や倉庫が被災したとき、自社の人員と設備だけで早く復旧できるとは限りません。事業所に流れ込んだ土砂の撤去や、止まった生産の代わりを、ほかの会社の協力で補えることがあります。

事業継続力強化計画には、自社だけで作る「単独型」のほかに、複数の事業者が共同で作る「連携事業継続力強化計画」(連携型)があります。中小企業庁の「連携事業継続力強化計画策定の手引き」(令和8年7月17日版)は、連携型の特徴として次の3点を挙げています。

  • 自社の資源だけでは早期の復旧が難しい場合でも、連携する事業者の協力で早期の復旧が可能になる
  • 集団で取り組むことで、発信力や交渉力などが強まる
  • 被害を受けなかった事業者と協力関係を作っておくことで、代替生産や復旧のための人員の応援が可能になる

この記事では、連携型に特有の条件と記載項目を中心に整理します。申請書の共通の考え方は「事業継続力強化計画の申請書の書き方」を参照してください。

参加できる事業者と、代表者の条件

中小企業庁のQ&A集は、連携型の参加者について次のように答えています。

表1連携型の参加者に関する主な条件
論点内容
中小企業者の数2者以上の中小企業者が計画に参加している必要がある
代表者中小企業者または中小企業組合であることが必要。大企業は代表者になれない
大企業の参加参加できる。参加する全ての大企業について、同意書の写しを提出する
社会福祉法人・特定非営利活動法人単独型では対象外だが、連携型の連携事業者としては対象になる
「実施に協力する者」計画の認定を受けた場合の支援措置は受けられない
単独型との併用単独型と連携型の両方の認定を受けることができる
参加者の変更連携事業者に変更があった場合は変更申請が必要(従業員数や住所などの軽微な変更は不要)

中小企業庁「事業継続力強化計画Q&A集(令和7年12月17日版)」Q13〜Q18、「連携事業継続力強化計画策定の手引き」P6をもとに編集部作成

大企業の同意書には決まった様式はなく、手引きはA4用紙1枚の例を示しています。大企業から申請者(連携の代表者)あてに提出してもらい、申請者がその写しを申請システムに添付します。

連携型も、単独型と同じく事業継続力強化計画の電子申請システムから申請します。単独型は画面に直接入力しますが、連携型は基本情報以外の申請内容を電子申請用の様式に記入し、システムに添付して申請します。連携事業者が11社以上になる場合は、別添の書類があります。※1※1計画の実施期間は、連携型も最長3年です。認定を受けた連携型の事業者のフォローアップは、中小企業基盤整備機構が行っています(中小企業庁の事業継続力強化計画のページによる)。

連携の3つの型

手引きは、連携のしかたを3つの型に分けています。申請書の「連携事業継続力強化における連携の態様」の欄で、どの型に当たるかをチェックし、具体的な内容を書きます。どれにも当たらない場合や、複数の型が組み合わさる場合は「その他の連携の態様」にチェックします。

表2連携モデルの3つの類型
類型構成取組の例
組合等を通じた水平的な連携同業種または異業種の複数の中小企業者代替生産、復旧に必要な人員や設備の融通、原材料・部品の確保の協力、車両・倉庫の相互利用、災害対応設備の共同導入
サプライチェーンにおける垂直的な連携原材料・部品などの需給関係にある親事業者と中小企業者水平的な連携の取組に加え、親事業者を中心としたセミナーの開催、被害状況の共有と迅速な復旧支援の体制づくり
地域における面的な連携工業団地、商店街、卸団地、地域の親睦団体など、地縁的な関係のある中小企業者水平的な連携の取組に加え、地方公共団体や自治会組織など、地域の復旧に関わる機関との協力関係づくり

中小企業庁「連携事業継続力強化計画策定の手引き(令和8年7月17日版)」P13をもとに編集部作成

神奈川県内でいえば、同じ工業団地や物流団地に入っている会社どうし、主要な取引先を頂点とする部品の供給網、同じ業種の組合などが、それぞれの型の出発点になり得ます。

型を選ぶときに考えておきたいのは、同時に被災するかどうかです。近くの会社どうしの面的な連携は、発災直後の助け合いや地域の復旧には向いていますが、同じ地震で全員が被災すれば代替生産はできません。手引きの対策事例にも、同時被災のリスクが低い地域の組合を支援の依頼先に選ぶ例や、生産体制・供給体制の地域分散を検討する例があります。所在地ごとの揺れや浸水の想定は、拠点リスク確認で比べられます。

単独型にはない記載項目

連携型の申請書は、単独型と同じくヒト・モノ・カネ・情報の観点で書きますが、連携ならではの欄がいくつかあります。

全ての連携事業者の確認を示すチェック

「自然災害等の想定」の欄では、全ての連携事業者が自らの全ての拠点について、ハザードマップなどで災害のリスクを認識していることを確認し、チェックを入れます。遠隔地の事業者が連携する場合は、最も大きな被害が想定される災害を書けばよく、全ての事業者の想定を書く必要はありません。

「事業活動に与える影響」も、各事業者の被害をそれぞれ書く必要はなく、連携事業者全体の主な影響を書きます。

連携事業者間の協定等の整備状況

全ての連携事業者が取組を進めることに合意していることなどを書きます。すでに合意書や協定を結んでいる場合は、その写しを添付します。手引きは、必要に応じて協定書や秘密保持契約書の作成を検討するよう求めており、協定書と機密保持契約書のサンプルを載せています。

協定書のサンプル(簡易なもの)には、次のような条項があります。

  1. 趣旨(災害等が発生した場合の円滑な連携と対応)
  2. 対応責任者をそれぞれ定める
  3. 災害等発生時の連絡体制と連絡方法を定める
  4. 対応手順をマニュアルとして策定する
  5. 施設の被害状況や地域の状況などの情報を提供し合う
  6. 応援人員の派遣、援助物資の搬送、非常用物資・非常用電源・燃料・用水の相互提供、施設や設備の融通
  7. 毎年度、可能な範囲で合同訓練を行う
  8. 毎年度、意見交換会などを開く
  9. 毎年度、連絡体制から訓練までを検証し、必要があれば見直す
  10. 必要経費の負担は別途協議する

代替生産のために製品の設計データや生産のノウハウを共有する場合、手引きは営業秘密の漏洩を防ぐ対策をあわせて講じる必要があるとしています。

初動対応:指揮命令体制と、被害情報の集約

単独型の初動対応(人命の安全確保、緊急時体制の構築、被害状況の把握と共有)に加えて、連携事業者の間では「指揮命令体制の整備」と「被害状況の集約と情報発信」を検討します。申請書では、避難の手順、安否確認の手順、指揮命令体制、被害状況の把握と情報発信の手順の4つについて、全ての連携事業者が整備済みであることを確認してチェックします。

手引きは、指揮命令体制について、対策本部を立ち上げる客観的な基準をあわせて検討する必要があるとしています。例として「震度6強以上の地震または災害救助法が適用される豪雨災害が発生した場合、いずれかの連携事業者から立ち上げの申し出があった場合に対策本部を立ち上げる」といった書き方が示されています。基準にした震度などは、各社の初動対応の手順と食い違わないようにそろえておきます。

連携事業者それぞれの役割

各欄に「連携事業者それぞれの役割」を書く欄があります。手引きは、書いた対策ごとに「誰が」「どのような目的のために」「どのような役割を担うか」を書くよう求めています。幹事会社を決め、平時は事前対策の検討会議として運営し、被災時は被災していない事業者が幹事に代わって支援業務を担う、といった記載例があります。

資金・設備・訓練を連携でどう書くか

資金と設備

資金の調達手段の欄では、各社の運転資金の保有状況を共有する、必要な運転資金をお互いに確かめる体制を整える、災害時に国や自治体の支援策の情報を共有する、といった対策事例が挙げられています。資金の確保が必要ない場合は、確認した事項(各社2か月以上の運転資金が確保できている、など)を書くよう手引きは求めています。各社の必要額は、リスクファイナンス判断シートで試算できます。

連携事業者間で代替生産を行う場合は、代替生産にかかる費用の負担方法や支払方法をあらかじめ検討しておくよう求められています。

設備の欄では、非常用発電機などを共同で購入する、共有施設の耐震性能を診断するといった事例があります。中小企業防災・減災投資促進税制の特別償却は、連携事業継続力強化計画の認定を受けた場合も対象です(実施要領による)。設備を共同で購入する場合は、共有持分にもとづいて資産に計上した取得価額が、各事業者の特別償却の対象になります(Q&A集のQ23)。支援策の条件は「事業継続力強化計画の認定で使える支援」を参照してください。

平時の推進体制と訓練

実効性を確保する取組の欄には、経営層のコミットメントを必ず書き、年1回以上の訓練と計画の見直しについても書きます。手引きの記載例では、連携事業者が参加する情報共有訓練を年1回以上行う、メールやウェブ会議で互いの取組に意見できる体制を整える、といった取組が挙げられています。

連携の前提として、各社がそれぞれ、経営層の指揮の下での推進体制、年1回以上の訓練・教育、年1回以上の見直しを検討しておくことが有効だとも書かれています(各社の取組を申請書に書く必要はありません)。各社の訓練の進め方は「机上訓練のやり方」で扱っています。

補足

連携型は、参加する会社が多いほど、合意と調整に時間がかかります。まず少数の会社で協定と連絡体制を作り、訓練で確かめてから参加者を増やす進め方もあります。参加者が変われば変更申請が必要になる点も、計画の範囲を決めるときの判断材料になります。

自社のBCPを作る流れはBCPの基本にまとめています。連携型の取組は、各社がそれぞれ自社の初動対応と重要な業務を整理していることで機能しやすくなります。単独型と連携型の両方の認定を受けることもできます。