大雨の日の出社・帰宅は、気象庁の防災気象情報を物差しにして、前もって社内ルールにしておきます。翌日の体制は、前日17時と当日5時の発表を見て決めます。帰宅の指示はレベル3の段階までに出し、レベル4の段階では危険な場所を通る移動を始めさせません。

会社がまずすること
  1. 判断する人と代わりの人、確認する市町村を決める(3章)
  2. どの情報が出たら何をするかを、1枚の基準表にする(3章。表2)
  3. 帰宅はレベル3の段階までに指示し、途中で危険を感じたら近くの建物に入ってよいとする(4章)

大雨の予報が出た日の朝、「今日は出社させるか」「何時に帰宅させるか」を、その場の相談で決めている事業所は少なくありません。判断が遅れると、従業員が帰宅途中で冠水した道路や増水した川に行き当たるおそれがあります。基準がないまま早めの帰宅を指示すると、部署ごとに対応がばらつきます。

規程に書く情報の名前を、新しい名称に合わせる

この章の要点令和8年5月29日から、情報の名称に警戒レベルの数字が付いた(大雨警報は「レベル3大雨警報」)。社内の規程や手順書の古い名称は書き直す

気象庁は、令和8年5月29日から新しい防災気象情報の運用を始めました。情報の名称に、警戒レベルの数字が付いています。たとえば、これまでの大雨警報は「レベル3大雨警報」という名称に変わりました(気象庁)。

河川氾濫・大雨・土砂災害・高潮に関する情報は、避難情報の5段階の警戒レベルに対応する形に整理されています。もとになったのは、令和6年6月に取りまとめられた「防災気象情報に関する検討会」の提言です。大雨で社内の判断に関わる情報は、表1のとおりです。

表1大雨に関係する新しい防災気象情報と警戒レベル
警戒レベル大雨に関する情報土砂災害に関する情報キキクルの色
5相当レベル5大雨特別警報レベル5土砂災害特別警報災害切迫(黒)
4相当レベル4大雨危険警報レベル4土砂災害危険警報危険(紫)
3相当レベル3大雨警報レベル3土砂災害警報警戒(赤)
2レベル2大雨注意報レベル2土砂災害注意報注意(黄)は2相当
1早期注意情報早期注意情報―

気象庁「新たな防災気象情報について(令和8年~)」、同「防災気象情報と警戒レベルとの対応について」、国土交通省・気象庁「河川氾濫・大雨に関する情報の改善」「土砂災害に関する情報の改善」をもとに編集部作成

統合された情報と、名前が変わった情報

  • 「大雨に関する情報」は、低い土地の浸水(内水氾濫)と、大きな河川以外の中小河川の氾濫をあわせて扱います。これまでの市町村ごとの洪水警報・注意報は、ここに統合されました
  • 1級河川などの大きな河川は、河川ごとに「レベル4氾濫危険警報」などの河川氾濫に関する情報が出ます
  • これまでの土砂災害警戒情報は、「レベル4土砂災害危険警報」という名称で出ます
社内の規程や手順書の古い名称は、書き直しておきます。 ※1※1社内の規程や手順書に「大雨警報」「洪水警報」「土砂災害警戒情報」と書いている場合は、新しい名称に合わせて書き直しておくと、当日の連絡で迷いが生じにくくなります。

前日17時と当日5時の発表で、翌日の体制を決める

この章の要点前日17時の早期注意情報と時系列情報で翌日の体制を仮に決め、当日5時の発表で確定する。「レベル3が出てから準備を始める」だけにはしない

出社の判断は前日の夕方から、帰宅の判断は当日の昼前後から考え始めます。それぞれの時点で見られる情報を、発表の時刻とあわせて押さえておきます。

  • 早期注意情報(警戒レベル1):5日先までの警報級の現象の可能性を、[高][中]の2段階で示します。毎日5時・11時・17時の天気予報にあわせて、1日3回出ます。大雨・土砂災害で[高]や[中]が出ていれば、レベル3以上の情報が出るような現象が起きる可能性があります。
  • 時系列情報(明日までの警報等の見通し):明日までにレベル3やレベル4などの情報が出る見込みかを、市町村ごとに示します。毎日5時・11時・17時・23時の1日4回出ます。見通しが大きく変わったときは、臨時に修正されます。
  • キキクル:大雨・河川氾濫・土砂災害の各レベルの情報のもとになっている危険度を、地図の色で示します。大雨キキクルは、洪水キキクルと浸水キキクルを切り替えて表示できます。
  • 気象防災速報:記録的な大雨や線状降水帯の発生など、極端な現象を速報的に伝える情報です。これまでの記録的短時間大雨情報は、「気象防災速報(記録的短時間大雨)」として出ます。

気象庁は、時系列情報を「明日までの行動計画や防災体制等の検討」に使うよう案内しています。前日17時の早期注意情報と時系列情報で翌日の体制を仮に決め、当日5時の発表で確定します。こうすると、判断の時刻がそろいます。

注意

社内の基準には、時系列情報や早期注意情報で先の見通しを確かめる段階も入れておきます。「レベル3が出てから準備を始める」だけにはしません。状況が急に変わると、レベル3土砂災害警報を経ずに、レベル2土砂災害注意報からレベル4土砂災害危険警報が出る場合もあります(気象庁)。

6つの手順で、社内ルールを決める

この章の要点判断する人と代わりの人、確認する地域、連絡の手段と時刻を決め、情報ごとの対応を1枚の表にする。事業所が浸水想定区域や土砂災害警戒区域の中なら、外へ移る段階も決める

総務やBCPの担当者が原案を作り、各部署の責任者と確かめる形で進めます。

  1. 事業所と通勤経路の想定を確かめる。 事業所の所在地と、従業員の主な通勤経路が、浸水想定区域や土砂災害警戒区域に入っているかを確かめます。所在地の想定は、拠点リスク確認でも一覧できます。
  2. 判断する人と代わりの人を決める。 出社・帰宅の判断を誰が出すかを決めます。その人が不在のときの代わりも決めておきます。
  3. 確認する地域の単位を決める。 大雨に関する情報は、市町村ごとに出ます。事業所の所在地の市町村に加えて、従業員の多くが住む市町村や、通勤で通る地域も確認の対象に入れます。
  4. 情報ごとの対応を表にする。 表2のように、どの情報が出たら何をするかを1枚にまとめます。
  5. 連絡の手段と時刻を決める。 前日の何時までに翌日の体制を知らせるか、当日の何時に確定するかを決めます。連絡に使う手段も決めます。
  6. 大雨の季節の前に見直す。 情報の名称や出し方は、変わることがあります。年に1回は、気象庁の公表資料と照らして表を見直します。
表2出社・帰宅の判断の基準表(例)
確認する時点・情報社内の対応の例
前日17時の早期注意情報で、翌日の大雨・土砂災害が[高]または[中]翌日の在宅勤務・時差出勤・出社見合わせの候補者を確認し、仮の体制を知らせる
当日5時の時系列情報で、日中にレベル3以上が見込まれる仮の体制を確定する。外出・訪問の予定を見直す
勤務中にレベル3大雨警報・レベル3土砂災害警報危険な区域を通って帰る従業員から、帰宅を前倒しする。キキクルで通勤経路の危険度を確かめる
勤務中にレベル4大雨危険警報・レベル4土砂災害危険警報危険な区域を通る移動は始めさせない。事業所が安全な場所にある場合は、社内にとどまる
レベル5の情報、または気象防災速報(記録的短時間大雨)移動中の従業員は、近くの頑丈な建物に入り、会社に連絡する

情報の名称・発表時刻は気象庁の公表資料による。社内の対応は編集部が作成した例

表2は一例です。事業所自体が浸水想定区域や土砂災害警戒区域の中にあるなら、「社内にとどまる」ことが安全とは限りません。立地に応じて、どの段階で事業所の外へ移るかも決めておきます。

帰宅はレベル3までに指示し、レベル4では危険な場所を通らせない

この章の要点帰宅の指示はレベル3の段階までに出し、レベル4の段階では危険な場所を通る移動を始めさせない。帰宅の途中で危険を感じた従業員は、近くの建物に入ってよいとする

警戒レベル4や3に相当する情報が出たら、市町村から避難指示などが出ていなくても、自ら避難を判断します。判断には、キキクルや川の水位の情報を使います(気象庁の呼びかけ)。レベル5の情報が出たときは、すでに災害が起きている可能性が極めて高い状況です。気象庁は、その前のレベル4までの段階で避難行動をとるよう求めています。

これを出社・帰宅に当てはめると、次の順序になります。

  1. 帰宅の指示は、レベル3の段階までに出す
  2. レベル4の段階では、危険な場所を通る移動を始めさせない

途中で危険を感じたら、近くの建物に入ってよいとする

避難では、指定された避難場所にこだわらず、その時点で最善の安全確保行動をとることが重要です(気象庁)。たとえば、川や崖から少しでも離れた、近くの頑丈な建物の上層階に移ります。帰宅の途中で危険を感じた従業員は、無理に帰らずに近くの建物に入ってよいことを、ルールに明記しておきます。

通勤路の低い道路を共有する

通勤路にアンダーパスなどの低い道路がある場合は、その場所も平時に従業員と共有しておきます。冠水のおそれがある場所には、路面に水深の目安が書かれていることがあります。脇に「道路冠水のため この先、通行止」の柵が置かれている場所もあります(写真1)。水がたまっているときは、表示の数字にかかわらず通らないことを、ルールに書いておきます。

写真1冠水のおそれがある場所の表示と柵(藤沢市、2026年10月撮影)
  • 路面に白い文字で「水深20cm」と矢印が書かれている

    路面の「水深20cm」の表示(藤沢市、小田急線高架下の県道)

  • 道路脇に置かれたオレンジ色の柵と土のう。柵に「道路冠水のため この先、通行止 道路管理者」の看板が付いている

    地下道の脇に置かれた「道路冠水のため この先、通行止」の柵と土のう(藤沢市、湘南台第一地下道)

写真:株式会社キール(防災経営)

歩いて通勤する従業員には、駅の近くの地下道も伝えます。横浜市港北区の浸水ハザードマップでは、新横浜駅の南側にある歩行者用の地下道のそばにも、アンダーパスの記号が付いています(写真2)。

写真2歩行者用の地下道の入口(横浜市港北区、2026年10月8日撮影)
  • 駅前の歩道に、屋根の付いた地下道の入口がある。屋根に「新横浜駅横断地下道」と書かれている

    「新横浜駅横断地下道」の入口(新横浜駅の南側、篠原町側)

写真:株式会社キール(防災経営)

アンダーパスの調べ方は、「アンダーパスの冠水に備える」で扱っています。

ルールは、従業員の安全への配慮を手順にしたもの

使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとされています(労働契約法第5条)。大雨の日の出社・帰宅のルールは、この配慮を具体的な手順として示すものでもあります。

決めたルールは、BCPの初動の手順とあわせて従業員に配ります。大雨の季節の前に読み合わせておくと、当日の判断が短くなります。

社内ルールに書いておくこと