土砂災害警戒情報は、大雨で土砂災害の危険が高まったときに、市町村長が避難指示を出す判断や、住民の自主的な避難の参考になるよう発表される情報です。令和8年5月29日に気象庁の防災気象情報の体系が改められ、この情報は「レベル4土砂災害危険警報」という名称で発表されるようになりました。

事業所にとっては、斜面の近くにある拠点や、がけの下を通る配送ルート、山あいの工事現場で、人の動きを止めたり移したりする判断の目安になる情報です。この記事では、名称の変更点を確認したうえで、発表の仕組みと、発表されたときに事業所がとる行動を整理します。

名称は変わったが、性質は変わらない

国土交通省砂防部は、レベル4土砂災害危険警報を、都道府県と気象庁が共同で発表している防災気象情報と説明しています。神奈川県では、県と横浜地方気象台が共同で発表してきました。令和7年9月5日に発表された「神奈川県土砂災害警戒情報 第1号」も、「神奈川県 横浜地方気象台 共同発表」として、鎌倉市・逗子市・葉山町を警戒対象地域に発表されています。

新しい体系では、土砂災害防止法にもとづく「土砂災害警戒情報」と、気象業務法にもとづく「土砂崩れに関する警報」を一体として、「レベル4土砂災害危険警報」の名称で通知などを行うこととされました。国土交通省は、名称は変わっても、土砂災害防止法にもとづく避難に資する情報という、土砂災害警戒情報としての性質は変わらないとしています。情報の伝達の流れも変わらないと説明されています。

土砂災害防止法第27条は、都道府県知事が区域ごとに土砂災害の急迫した危険が予想される降雨量を設定し、降雨量がそれに達したときは、避難のための立退きの指示の判断に資するため、関係のある市町村の長に通知するとともに、一般に周知させるため必要な措置を講じなければならないと定めています。

表1土砂災害に関する情報の名称(令和8年5月29日以降)
警戒レベル以前の名称現在の名称
5相当大雨特別警報(土砂災害)レベル5土砂災害特別警報
4相当土砂災害警戒情報レベル4土砂災害危険警報
3相当大雨警報(土砂災害)レベル3土砂災害警報
2大雨注意報レベル2土砂災害注意報

国土交通省・気象庁「土砂災害に関する情報の改善」をもとに編集部作成

※1※1社内の手順書や掲示に「土砂災害警戒情報が出たら」と書いてある場合は、「レベル4土砂災害危険警報(旧:土砂災害警戒情報)が出たら」のように、新旧の名称を並べて書き直しておくと、従業員が報道で聞く名称と一致します。

発表の基準と、危険度の色の意味

レベル4土砂災害危険警報の発表基準は、都道府県と気象台が連携し、過去の災害実績などにもとづいて設定した「土砂災害発生危険基準線(CL)」です。60分雨量と土壌雨量指数(降った雨が土の中にどれだけたまっているかを数値化したもの)の組み合わせで判定します。

どこで危険度が高まっているかは、気象庁の「土砂キキクル」で確かめられます。土砂キキクルは、1km四方の領域ごとに危険度を5段階に色分けし、10分ごとに更新されます。

表2土砂キキクルの色と判定の基準
色判定の基準相当する警戒レベル
災害切迫(黒)実況値がレベル5土砂災害特別警報の基準値以上5相当
危険(紫)実況値または2時間先までの予測値がレベル4土砂災害危険警報の基準以上4相当
警戒(赤)3時間先の予測値がレベル4土砂災害危険警報の基準以上3相当
注意(黄)実況値または6時間先までの予測値がレベル2土砂災害注意報の基準以上2相当
今後の情報等に留意(無色)実況値と6時間先までの予測値が、いずれもレベル2土砂災害注意報の基準未満―

気象庁「土砂キキクル」をもとに編集部作成

気象庁は、2時間先までの予測値がレベル4の基準に達すると予想された時点(紫)で、速やかにレベル4土砂災害危険警報を発表するとしています。ただし、積乱雲が急に発達する場合など予測が難しいときは、レベル3土砂災害警報を経ずにレベル4が発表されることもあるとしています。

神奈川県の土砂災害情報ポータルにも、同じ考え方で危険度を示す「土砂災害警戒判定メッシュ情報」があります。県は、60分雨量と土壌雨量指数の実況値または6時間先までの予測値を用いて、警戒レベル相当を5段階で色分け表示していると説明しています。

発表されたときの事業所の行動

気象庁は、土砂災害警戒区域等にいる人について、高齢者等は遅くとも「警戒」(赤)が出た時点で、一般の人は遅くとも「危険」(紫)が出た時点で、区域の外の安全な場所へ速やかに避難を始めることが大変重要だとしています。レベル4土砂災害危険警報は、この「危険」(紫)に当たる段階です。

重要度 高

レベル4土砂災害危険警報が出た地域で、事業所や現場が土砂災害警戒区域等の中にある場合は、市町村の避難指示を待たずに、区域の外への移動を始めます。レベル5の「災害切迫」(黒)は、土砂災害が切迫しているか、すでに起きている可能性が高い状況とされており、それを待ってから動くのでは遅くなります。

事業所の立場に当てはめると、行動は次のように整理できます。

表3レベル4土砂災害危険警報が出たときの行動の例
立場行動の例
区域の中にある事業所・施設従業員と利用者を、区域の外の決めておいた場所へ移す。移動が危険な場合は、建物の中でがけから少しでも離れた部屋などに移る
区域の外にある事業所区域を通る通勤・配送・巡回の移動を始めさせない。帰宅は区域を通らない経路に限る
移動中の車両・従業員区域に入る前に止まり、安全な場所で待機して会社に連絡する
斜面の近くの工事現場作業を中止し、作業員を斜面から離れた安全な場所へ移す

情報の意味は気象庁・国土交通省・神奈川県の公表資料による。事業所の行動は編集部が作成した例

気象庁は、道路の冠水などで避難場所への移動がかえって危険な場合には、その場所よりは相対的に安全な場所へ直ちに移動するなど、次善の行動をとるよう呼びかけています。例として、崖から少しでも離れた部屋で待避することや、近くの頑丈な建物に緊急的に移ることを挙げています。表3の「移動が危険な場合」の行動は、この考え方にもとづいています。

また気象庁は、斜面で普段と異なる状況(土砂災害の前兆現象)に気づいた場合は、直ちに周りの人と安全な場所に避難するとともに、市町村役場などに連絡するよう求めています。情報の発表を待たずに動く場合があることも、社内で共有しておきます。

当日に確かめる画面と、その注意点

発表されたときに確かめる画面は、次の3つです。社内で見る人を決め、ブックマークを共有しておくと、当日の確認が早くなります。

  1. 気象庁の警報・注意報のページ:どの市町村にレベル4土砂災害危険警報が出ているかを確かめます。令和7年9月5日の神奈川県の発表文では、横浜市は北部と南部、相模原市は東部と西部に分けて対象地域の区分が示されていました。事業所がどちらに入るかを事前に確かめておきます。
  2. 土砂キキクル:事業所や経路のあたりが何色になっているかを確かめます。
  3. 神奈川県土砂災害情報ポータルの「土砂災害の危険度」:県の判定メッシュ情報と、土砂災害警戒区域の位置を確かめます。

これらの画面には、共通の注意点があります。気象庁と神奈川県は、避難などの判断は危険度の表示だけで行うのではなく、危険度が高まっている領域の中の土砂災害警戒区域等に絞り込んで行う必要があるとしています。また、表示は危険度が頻繁に変わらないよう過去30分間の最大の危険度を示していること、平坦で土砂災害が起こりえない領域などでは「警戒」(赤)以上の表示にならないことも説明されています。そうした場所で活動する場合は、「雨雲の動き」などで最新の状況を確かめ、危険な場所から離れることが重要だとしています。

※2※2気象庁のFAQは、レベル3土砂災害警報が発表された場合はまもなくレベル4土砂災害危険警報の発表が見込まれるとして、早めの避難を呼びかけています。表3の行動を、レベル3の段階で準備し始めておくと、レベル4が出たときの動きが短くなります。

事業所や経路が土砂災害警戒区域に入っているかどうかを平時に調べる方法は、土砂災害警戒区域に事業所や通り道が入っていないかを調べるで整理しています。出社・帰宅のルールとしてまとめる場合は、大雨の日の出社・帰宅の判断もあわせて参照してください。