事業継続力強化計画は、中小企業が作った防災・減災の事前対策の計画を、経済産業大臣が認定する制度です。中小企業庁は、この計画を「中小企業のための取り組みやすいBCP」と位置づけています。

取り組みやすいとはいえ、申請書には決まった項目があり、書き方の決まりもあります。中小企業庁は、申請書の項目ごとに記載例と注意点をまとめた「事業継続力強化計画策定の手引き」を公開しています。この記事では、令和8年7月17日版の手引きに沿って、自社だけで作る「単独型」の申請書の書き方を項目の順に整理します。複数の会社で作る連携型は、別の記事で扱います。

これまでの段階(BCPの基本の1〜4)で、所在地の災害、止まると困る業務、初動対応を検討してきた場合は、その結果を申請書の欄に当てはめていく作業になります。

申請の前に済ませておくこと

申請は、単独型・連携型ともに、事業継続力強化計画の電子申請システムから行います。単独型は、申請書の内容をシステムの画面に直接入力します。

電子申請システムへのログインには、GビズIDのアカウントが必要です。中小企業庁の申請方法のページでは、アカウントの取得に約2週間程度かかるとしています。申請を考えはじめた段階で、先に取得の手続きを始めておくと、計画ができてから待つことがありません。※1※1システムへの直接入力に備えて、中小企業基盤整備機構が下書き用のフォーマット(Word形式)を公開しています。社内で内容を確認してから入力する場合に使えます。

申請から認定までの流れは、次のとおりです。

  1. 事前の確認。 自社だけで作る単独型か、複数の事業者で作る連携型かを決めます。税制措置や金融支援を受ける予定がある場合は、関係機関の審査もあるため、対象者の要件や手続きを先に確かめておくよう、制度の概要で勧められています。
  2. 計画の作成。 策定の手引きを見ながら、申請書の各項目を検討します。
  3. 申請。 電子申請システムから申請します。審査の標準処理期間は45日です。申請書に不備があると、経済産業局からの照会などで時間がかかることがあります。
  4. 認定。 認定を受けると認定通知書が交付され、事業者名などが中小企業庁のホームページで公表されます(計画の内容は公表されません)。
  5. 取組の実行と見直し。 認定を受けた計画にもとづいて取組を進め、計画で決めた時期に見直します。

申請の期限はありません(Q&A集のQ11)。計画の実施期間は3年が上限で、実施期間の開始は申請日以降の年月にします。

申請書を構成する6つの項目

手引きでは、単独型の申請書は次の6つの項目で構成されています。基本的には全ての記入欄を埋める必要があり、任意の記載事項や該当がない欄には「該当無し」などと書きます(Q&A集のQ4)。

表1単独型の申請書の項目と、書く内容
項目主な欄書く内容
1 名称等事業者の名称、代表者の役職・氏名、業種、従業員数、住所正式名称と登記簿上の住所。業種は日本標準産業分類の中分類
2 事業継続力強化の目標事業活動の概要、取り組む目的、想定する自然災害等、事業活動に与える影響自社の役割、目的、ハザードマップ等にもとづく災害の想定と、ヒト・モノ・カネ・情報への影響
3 事業継続力強化の内容(1)対応手順、(2)対策及び取組、(3)設備等の種類、(4)協力する者、(5)実効性を確保する取組初動対応の手順と事前対策、経営資源ごとの現在の取組と今後の計画、訓練と見直し
4 実施期間開始と終了の年月最長3年。開始は申請日以降
5 必要な資金の額及び調達方法実施事項、使途、調達方法、金額対策に必要な資金と、その調達の方法
6 その他関係法令の遵守、その他の取組関係法令の遵守の確認(チェックが必須)

中小企業庁「事業継続力強化計画策定の手引き(令和8年7月17日版)」をもとに編集部作成

表紙と名称等では、細かな入力の決まりがあります。名称は省略せずに正式名称を入力し、代表者の役職は必ず書きます(役職がない個人事業主などは「代表」)。役職が空欄だと、システム上でエラーになります。

「目標」の欄:自社の役割と、災害の想定を書く

2の「事業継続力強化の目標」は、計画の前提をつくる欄です。手引きが特に強く求めているのは、次の2点です。

事業活動の概要には、自社の役割を書く

事業活動の概要には、業種に加えて、自社の事業活動が担う役割を書きます。手引きは、サプライチェーンにおける役割、または地域経済などにおける役割の記載がない場合、計画書の不備として認定の対象にならないとしています。

記載例では、「大手メーカーの部品の過半数のシェアを担っている」「地域の複数の飲食店へ野菜を卸しており、早期に復旧しないと飲食店に影響が及ぶ」のように、自社が止まったときに誰が困るのかを具体的に書いています。取引先に説明するときの言葉と、ほぼ同じものになります。

取り組む目的には、従業員とその家族に対する責務、顧客・取引先や地域経済への影響、自社の理念や基本的な方針などを、自社の考えと照らし合わせて書きます。

災害の想定には、根拠の資料を書く

「事業活動に影響を与える自然災害等の想定」には、ハザードマップなどで確認した災害を書きます。手引きは、ハザードマップ等の根拠資料が書かれていない場合は修正が必要になるとしています。地震は予想される震度や津波の高さ、水害は浸水の深さなどを具体的に書きます。

想定する災害は、事業活動に大きな影響を与える可能性が高いものを1つ以上書けばよく、全ての災害を網羅する必要はありません。拠点が複数ある場合も、拠点ごとの詳細な被害想定までは求められていません。

手引きが入手先として挙げているのは、各自治体のホームページ、国土交通省の「川の防災情報」とハザードマップポータルサイト、防災科学技術研究所の J-SHIS です。当サイトの拠点リスク確認でも、所在地の今後30年に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率や洪水の浸水想定を確かめられます。読み方は「ハザードマップの読み方」を参照してください。

続く「事業活動に与える影響」では、想定した災害のうち最も大きな被害が想定されるものについて、人員、建物・設備、資金繰り、情報、その他(インフラや取引先の被災による間接的な影響など)の観点から影響を書きます。手引きは、資金繰りの影響については関東経済産業局のリスクファイナンス判断シートを使って書くよう求めており、算出結果を参考資料として添付することも推奨しています。

「内容」の欄:初動対応の手順と、経営資源ごとの対策

3の「事業継続力強化の内容」は、申請書のなかで最も分量が多い項目です。5つの欄があります。

(1) 自然災害等が発生した場合における対応手順

初動対応の内容を、4つの項目ごとに「初動対応の内容」「発災後の対応時期」「事前対策の内容」の3列で書きます。

表2対応手順の欄の4項目と、手引きの記載例(自然災害の場合)
項目初動対応の内容(例)発災後の対応時期(例)
1 人命の安全確保従業員の避難方法、安否確認方法、設備の緊急停止方法、顧客への対応方法発災直後
2 非常時の緊急時体制の構築代表取締役を本部長とした災害対策本部の立ち上げ発災後1時間以内
3 被害状況の把握・被害情報の共有被災状況や生産・出荷への影響の確認、顧客・取引先・市・商工団体への第一報発災後12時間以内
4 その他の取組自社で必要な取組—

中小企業庁「事業継続力強化計画策定の手引き(令和8年7月17日版)」P11の記載例をもとに編集部作成

手引きは、各項目は必ず記載する必要があるとしています。「被害状況の把握・被害情報の共有」は、把握と共有のそれぞれについて書きます。従業員がいない場合は、自身や家族などと読み替えて書きます。連絡網などの詳しいリストを申請時に添付する必要はありません。

表2の時間は手引きの記載例で、決まった基準ではありません。自社で決めた手順は、「発災直後の1時間の初動手順」と「安否確認の方法と訓練」で検討した内容を当てはめると書きやすくなります。

(2) 事業継続力強化に資する対策及び取組

経営資源ごとに、A(ヒト:人員体制の整備)、B(モノ:設備・機器・装置の導入)、C(カネ:資金の調達手段の確保)、D(情報:重要情報の保護)の欄があり、それぞれ「現在の取組」と「今後の計画」を書きます。今後の計画は案の段階でもよく、災害の影響がない経営資源の欄は書く必要がありません。

B欄は、税制措置や日本政策金融公庫の低利融資を受ける予定がなくても記載が必要です。税制措置を受ける場合は、B欄に具体的な設備と導入の目的を書いたうえで、(3)の設備等の種類と、5の資金の欄にも書きます。3つの欄の内容がそろっていることが前提になります。

C欄では、休業中も出ていく固定費や復旧の費用を、手元資金や金融機関からの借入れなどでどう賄うかを書きます。手引きは、災害時には事業再開までの運転資金と、施設・設備の修繕などに必要な設備資金が必要になるとしています。金額の見当は、リスクファイナンス判断シートで付けられます。

(3)〜(5)

(3)の「事業継続力強化設備等の種類」は、税制措置を受ける場合に限って書く欄です(Q&A集のQ19)。(4)の「実施に協力する者」は、取引先や金融機関、商工会議所などから支援を受ける場合に書き、いなければ空欄のままにします。

(5)の実効性を確保する取組には、経営層の指揮の下での平時の推進体制、年1回以上の訓練や教育、年1回以上の計画の見直し、取組内容の社内への周知の4点を書きます。訓練・教育と見直しには、実施予定の月も書きます。訓練の進め方は「机上訓練のやり方」、見直しは「年1回の見直しで確認すること」を参照してください。

注意

すでに自社のBCPがある場合は、手引きの記載例にならって、BCPの該当部分を申請書に転記し、添付したBCPの該当ページ番号を書く方法が認められています。機密にしたい情報は塗りつぶして構いません。

実施期間・資金・その他と、認定の後の手続き

4の実施期間は、3年が上限です。手引きは、実施期間と認定期間は異なり、認定期間は認定を受けた日から実施期間が終了する月までを指すとしています。

5の資金の欄には、対策に必要な資金の額と調達方法(自己資金、金融機関からの融資など)を書きます。税制措置や金融支援を受ける場合は必ず書き、日本政策金融公庫の低利融資を使う場合はその旨を明記します。

6の「その他」では、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律などの関係法令に抵触する内容を含まないことの確認に、チェックが必須です。レジリエンス認証やISO 22301認証の取得、中小企業BCP策定運用指針にもとづくBCPの策定といった任意の確認欄は、チェックがなくても審査に影響はありません。

認定を受けた後、実施期間中であれば計画の内容を変更申請できます。資金調達額の若干の変更や代表者の交代など、計画の趣旨を変えない軽微な変更は、変更申請は不要です。実施期間が満了した後は変更申請はできず、認定を続けたい場合は新たに申請します(Q&A集のQ5)。2回目以降の申請と変更申請には、直近の計画の実施状況報告書が必要です。※2※2認定の更新(2回目以降の申請)は必須ではありません(Q&A集のQ12)。ただし、認定で利用できる支援策には、認定を受けた日から一定の期間内に限られるものがあります。支援策の条件は「事業継続力強化計画の認定で使える支援」で整理しています。

BCPと事業継続力強化計画の関係は「BCPと事業継続力強化計画の違い」で説明しています。申請書は、BCPの主要な部分を決まった形式でまとめたものと考えると、社内での分担を決めやすくなります。