事業継続力強化計画の認定を受けると、中小企業庁の説明では「税制措置や金融支援、補助金の加点などの措置」を受けられます。ただし、どの支援にも対象者や期限、申請書への記載といった条件があります。認定を受けてから条件に気づいても、使えない支援があります。
この記事では、中小企業庁が公表している「事業継続力強化計画認定制度の概要」(令和8年7月17日版)と、税制の実施要領(令和8年7月16日版)を中心に、支援策ごとの条件を整理します。制度の内容は予告なく変わることがあるため、実際に利用するときは中小企業庁のホームページで最新版を確かめてください。
支援策の 全体 像
中小企業庁の資料に挙げられている支援策を、種類ごとにまとめると表1のとおりです。
| 種類 | 支援策 | 概要 |
|---|---|---|
| 税制 | 中小企業防災・減災投資促進税制 | 計画に記載した防災・減災設備を、認定から1年以内に取得等した場合に特別償却16% |
| 金融 | 日本政策金融公庫の低利融資 | 計画に沿った設備投資などに必要な資金を低利で借りられる |
| 金融 | 信用保証協会の保証の特例 | 計画の実行のための融資で、通常とは別枠での追加保証や保証枠の拡大 |
| 金融 | 中小企業投資育成株式会社法の特例 | 資本金3億円を超える株式会社も、投資育成会社からの投資を受けられる |
| 金融 | 日本政策金融公庫のスタンドバイ・クレジット | 海外支店・海外子会社の現地での借入れに対する債務の保証 |
| 補助金 | 審査での加点 | 中小企業庁の一部の補助金で、審査の際に加点 |
| その他 | 認定ロゴマーク | 自社の広報活動や販売活動に使える |
中小企業庁「事業継続力強化計画認定制度の概要(令和8年7月17日版)」をもとに編集部作成
このうち多くの中小企業に関わるのは、税制、日本政策金融公庫の融資、補助金の加点の3つです。以下、この3つを順に確かめます。
中 小企業防災・減災投資促進税制 (特別償却16%)
中小企業防災・減災投資促進税制は、中小企業が自然災害に備えて行う設備投資を後押しするため、租税特別措置法で設けられた制度です。実施要領によると、令和元年7月16日から令和9年3月31日までの間(認定対象期間)に事業継続力強化計画または連携事業継続力強化計画の認定を受けた中小企業者が、認定を受けた日から同日以後1年を経過する日までの間(適用対象期間)に、計画に記載した対象設備を取得等して事業の用に供した場合に、特別償却16%を受けられます。※1※1中小企業庁の資料は、本税制の適用にあたっては税理士または最寄りの税務署などに問い合わせるよう案内しています。自社の決算や申告への影響は、顧問の税理士に確かめてください。
対象に なる 事業者
対象は、青色申告書を提出する中小企業者等です。実施要領では、資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人、資本または出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人、常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主などが挙げられています。資本金1億円超の大規模法人から2分の1以上の出資を受ける法人などは対象外です。
制度の概要は、税制措置の対象となる企業は、計画の認定を受けられる企業の全てではないと注意しています。計画の認定は資本金3億円以下の製造業なども受けられますが、税制の対象は資本金1億円以下などに限られます。
対象に なる 設備
対象設備は、中小企業等経営強化法施行規則第29条にもとづく、自然災害の発生が事業活動に与える影響の軽減に資する機能を持つ減価償却資産です。
| 減価償却資産の種類 | 取得価額の要件 | 対象となるものの例 |
|---|---|---|
| 機械及び装置 | 100万円以上 | 自家発電設備、浄水装置、揚水ポンプ、排水ポンプ、耐震・制震・免震装置 など |
| 器具及び備品 | 40万円以上 | 自然災害の発生が事業活動に与える影響の軽減に資する機能を有する全ての設備 |
| 建物附属設備 | 60万円以上 | 自家発電設備、キュービクル式高圧受電設備、変圧器、配電設備、照明設備、無停電電源装置、貯水タンク、排水ポンプ、止水板、耐震・制震・免震装置、防水シャッター など |
中小企業庁「中小企業防災・減災投資促進税制の運用に係る実施要領(令和8年7月16日版)」をもとに編集部作成
器具及び備品の取得価額の要件は、令和8年7月16日の実施要領の改正で、30万円以上から40万円以上に変わりました(新旧対照表による)。古い資料を見て検討している場合は注意が必要です。
次のいずれかに当たる設備は、表2に当てはまっても対象外です。
- 消防法と建築基準法にもとづき設置が義務づけられている設備
- 中古品、所有権移転外リースによる貸付資産
- 設備の取得等に充てるために国または地方公共団体の補助金等の交付を受けて取得等をする設備
Q&A集では、このほかにも、太陽光パネルや蓄電池は対象ではないこと(Q41)、防災・減災の機能を直接持たない一般的な棚などは対象にならないこと(Q38)、設備の修繕は対象にならないこと(Q39)が示されています。同じ減価償却資産で、ほかの特別償却や税額控除と重ねて適用を受けることもできません(Q30)。
期限と 手続きの 順番
この税制で最も注意が必要なのは、順番です。対象設備は、計画の認定を受けた後に取得することが必須で、認定前に取得した設備は対象外です(Q&A集のQ21)。
- 計画に設備を書く。 申請書の3.(2)B欄に具体的な設備と導入目的を、3.(3)「事業継続力強化設備等の種類」に設備の名称・型式・設置場所・取得予定年月を、5の資金の欄に資金の調達方法を書きます。設備の種類(機械装置・器具備品・建物附属設備)は、税理士等の判断を受けてから書くよう手引きで求められています。
- 認定を受ける。 対象設備であることの経済産業大臣の確認は、計画の認定の際にあわせて行われます。
- 認定から1年以内に取得して使い始める。 取得等とは、所有権を得たこと(請負契約による建物は、一般的には引渡しを受けたこと)を指します(Q&A集のQ22)。
- 税務申告する。 申告の際に、対象設備の償却限度額の計算明細書を添付します。認定通知書と認定を受けた計画の写しは、税務調査などで必要になるため保管します。
認定の後に設備を追加したい場合は、計画の変更申請が必要です(Q&A集のQ25)。
日本政策金融公庫の 低利融資と、 その ほかの 金融面の 支援
制度の概要によると、認定を受けた事業者が行う設備投資などに必要な資金について、日本政策金融公庫の低利融資(国民生活事業の企業活力強化資金、中小企業事業のBCP資金)を受けられます。融資を受けるには、別に日本政策金融公庫の審査が必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 貸付金利 | 設備資金は基準利率から0.9%引下げ、運転資金は基準利率から0.4%引下げ(信用リスク・貸付期間などに応じて所定の利率) |
| 貸付限度額 | 国民生活事業 7,200万円、中小企業事業 7億2,000万円(引下げが適用されるのは、限度額のうち4億円まで) |
| 貸付期間 | 設備資金 20年以内、長期運転資金 10年以内(据置期間 2年以内) |
中小企業庁「事業継続力強化計画認定制度の概要(令和8年7月17日版)」P4をもとに編集部作成
手引きでは、日本政策金融公庫の融資を使う場合、申請書の3.(2)B欄に具体的な導入設備と導入目的を書き、5の資金の欄にも公庫の低利融資を使う旨を明記するよう求めています。制度の概要は、金融支援を検討している場合は、計画を提出する前に関係機関に相談するよう案内しています。
このほか、表1のとおり、信用保証協会の保証で通常とは別枠の追加保証や保証枠の拡大を受けられる特例、資本金3億円を超える株式会社が中小企業投資育成株式会社からの投資を受けられる特例、海外子会社などの現地通貨建ての借入れに日本政策金融公庫が債務を保証するスタンドバイ・クレジット(保証限度額は1法人あたり最大4億5,000万円、融資期間1〜5年)があります。
災害時に必要になる資金の規模を先に見積もっておくと、どの支援を使うかを判断しやすくなります。当サイトのリスクファイナンス判断シートで、想定する休業期間の資金の過不足を試算できます。
補助金の 審査での 加点と、 認定ロゴマーク
制度の概要(令和8年7月17日版)では、認定を受けた事業者は、次の補助金で審査の際に加点を受けられるとしています。
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
- 事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠)
- 中小企業省力化投資補助金(一般型)
- 小規模事業者持続化補助金(一般型・通常枠)
- 小規模事業者持続化補助金(創業型)
加点の具体的な条件は、補助金ごとの公募要領で定められます。応募する回の公募要領で、認定を受けている必要がある時点(申請時までか、など)を確かめてください。中小企業庁の申請方法のページでは、補助金の加点申請などで計画の「受付番号」の入力が必要な場合の確認方法も案内しています。
大規模な災害が起きた後に、被災した事業者の設備の復旧などを補助する予算事業が実施される場合、申請の際に認定を受けた書類を求められることがあるとも書かれています。
また、認定を受けた事業者は、認定ロゴマークを自社の広報活動や販売活動に使えます。認定を受けた事業者は、使用規約同意書の提出は不要です。
支援策は、計画の認定そのものとは別に、それぞれの機関の審査や要件があります。特に税制は、認定の前に設備を買ってしまうと対象になりません。設備投資を予定している場合は、申請書を書く前に、設備の種類と取得の時期を税理士や経済産業局に確かめておくと安全です。
申請書の項目ごとの書き方は「事業継続力強化計画の申請書の書き方」で整理しています。計画を作る流れ全体はBCPの基本の5段階目にまとめています。