2026年11月2日、防災庁が発足しました。内閣府の防災担当を改組した組織で、防災の基本方針づくりから、災害が起きたあとの対応と復旧・復興までの司令塔を担います。調べた範囲では、発足によって会社に新しい義務ができることは確かめられませんでした。会社はまず、これまでの手続きと窓口がそのままであることを確かめ、見直しが進む事業継続ガイドラインの論点を、自社のBCPの点検に使います。

会社がまずすること
  1. BCPや事業継続力強化計画の手続きと窓口が、これまでどおりかを確かめる(2章)
  2. 社長に連絡がつかないときの決め方を、BCPで見直す(4章・5章)
  3. 市町村との協定や、地域で自社が担える役割を確かめる(3章・5章)

この記事では、防災庁設置法と政令、政府の「防災立国の推進に向けた基本方針」(令和7年12月26日閣議決定)、事業継続ガイドラインの検討会の資料、発足の日の防災庁のホームページをもとに整理します。BCPの基本は「企業防災とは」で扱っています。

防災庁は内閣に置かれ、中央防災会議も移る

この章の要点防災庁設置法は2026年7月17日に公布され、11月2日に施行された。首相が長で、防災大臣が事務を統括し、ほかの府省庁に勧告できる

防災庁設置法(令和8年法律第61号)は2026年7月17日に公布されました。施行の日を11月2日とする政令は、9月30日に公布されています。防災庁は内閣に置かれ、長は内閣総理大臣です。事務を統括する防災大臣には、関係する行政機関の長に勧告する権限があり、勧告を受けた側には尊重する義務があります。

表1防災庁の主な仕組み
項目内容
置かれる所内閣。内閣府の防災担当を発展的に改組する
長内閣総理大臣。事務を統括する防災大臣を置く
権限防災大臣は、関係する行政機関の長に勧告できる。勧告を受けた側には尊重する義務がある
会議中央防災会議を内閣府から防災庁に移す
組織統括官4人・審議官2人・参事官15人。内部は総合政策・災害事態対処・防災計画・地域防災の4部門
地方の機関防災局を置く。この部分の施行は、公布から2年を超えない範囲で政令で定める日
研修研修と研究を行う防災大学校(仮称)を置くことができる
ホームページこれまでの内閣府防災のサイト(www.bousai.go.jp)を引き継いだ

内閣官房「防災庁設置法及び防災庁設置法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の概要」「防災庁組織令案要綱」「防災立国の推進に向けた基本方針(概要)」をもとに編集部作成

防災庁のホームページは、これまでの内閣府防災のサイト(www.bousai.go.jp)を引き継いでいます。11月2日の朝に確かめたところ、内閣府防災のときの資料は同じURLのまま見られました。表記やリンクは順に直していくと案内されています。会社が社内の資料に国の資料のURLを控えている場合も、今のところ書き換える必要はありません。

あわせて災害対策基本法が改正され、基本理念に「科学的なリスク評価に基づく事前防災」と「被災者の良好な生活環境の確保」が加わりました。南海トラフ地震や日本海溝・千島海溝の地震の法律には、リスク評価の結果や人口の変化などに応じて、国の基本計画を見直す義務が新しく設けられています。

会社の義務と手続きは、今のところ変わらない

この章の要点基本方針は、分野ごとの防災対策は引き続き各府省庁が行うとしている。事業継続力強化計画の認定も、これまでどおり経済産業局が窓口

政府の基本方針は、防災庁を司令塔としつつ、「個別行政分野における防災対策等は引き続き各府省庁で実施」としています。調べた範囲では、防災庁の発足によって、会社にBCPを作る義務や、届け出の手続きが新しくできることは確かめられませんでした。

事業継続力強化計画の申請と認定、介護事業所のBCPなど、今の制度の手続きと窓口は、これまでどおりです。事業継続力強化計画は中小企業庁の制度で、神奈川県の会社は関東経済産業局に申請します。手順は「神奈川県の会社がジギョケイを申請する手順」にまとめています。

防災庁の仕事で、会社に関わるところ

この章の要点法律は「民間事業者等が防災計画等に基づき実施する事前防災の推進」を防災庁の仕事にした。基本方針は、社会全体の事業継続体制と、自治体と企業の協定を進めるとしている

法律の概要では、防災庁の仕事の一つに「国・地方公共団体・民間事業者等が防災計画等に基づき実施する事前防災の推進」が挙げられています。基本方針(本文p.9)は、大規模な災害でも社会・経済の機能が維持されるよう、民間企業を含む社会全体の事業継続体制と、産業をまたいだ事業継続の取組を進めるとしています。

基本方針は、自治体と民間企業の協定の締結を進めるなど、民間企業が地域の防災に参画する取組を進めるとしています。神奈川県内でも、建設業者などが県・市町村と災害時の応援協定を結んでいます。協定の仕組みは「建設業者と自治体の災害時応援協定」で扱っています。

事業継続ガイドラインの見直しは、防災庁が引き継いだ

この章の要点今の事業継続ガイドラインは令和5年3月版。内閣府が7月13日に見直しの検討会を始め、検討会のページは防災庁のサイトに移った。10月5日の第2回は、中小企業にBCPを広げる方策を中小企業庁と連名の資料で議論した。改定の時期は示されていない

内閣府の事業継続ガイドラインは、会社がBCPを作るときの国の手引きです。今の版は令和5年3月のものです。内閣府は2026年7月13日に「事業継続ガイドライン改定等に関する検討会」の第1回を開きました。首都直下地震と南海トラフ地震の基本計画の見直しで、経営の中枢の機能を保つ代替の戦略や、サプライチェーンの対策の強化が指摘されたことを受けたものです。防災庁の発足で内閣府の防災担当は防災庁に改組され、検討会のページも防災庁のサイトに載っています。

表2事業継続ガイドラインの見直しで検討する主なテーマ
テーマ検討の中身
経営の中枢の機能を保つ代替の戦略代わりの拠点や、意思決定の代わりの手段を具体的にする
「結果事象起点」での対策リスクに共通する対策と、リスク別の対応を整理し、定期的な見直しを促す
サプライチェーンの対策企業どうしの連携を含めた、実効性のある対策
帰宅困難者対策・地域の連携別の検討会の結果をガイドラインにどう反映するか
BCPに取り組む会社が社会的に評価される環境評価・認証の制度やインセンティブ。次の年度の取組の方針を整理する

内閣府「事業継続ガイドライン改定等に関する検討会」資料2(検討会の目的・検討概要について、令和8年7月13日)をもとに編集部作成。議論の状況で内容が変わる可能性がある

10月5日の第2回では、内閣府(防災計画担当)と中小企業庁の連名の資料で、中小企業にBCPを広げる方策を議論しました。資料は、中小企業が企業数の約99.7%、従業者数の約7割を占めるとして、中小企業へのBCPの普及が地域経済とサプライチェーンの強靱化に重要だとしています。中小企業向けには、中小企業庁の事業継続力強化計画の認定制度を使う形が示されています。認定で使える支援は「事業継続力強化計画の認定で使える支援」で扱っています。

検討会は7回の開催を想定しており、最後の回で改定案を確かめる予定です。改定の時期は、資料には示されていません。第1回の議事要旨には、委員の意見として次のことが載っています。意思決定の権限の代行を決めておくことが重要で、事業所のような小さな単位でも、キーパーソンがいないときの対応を考えておく必要がある。

改定を待たずに、今のうちに見直しておくこと

この章の要点社長に連絡がつかないときの決め方、仕入先・外注先が止まったときの代わり、地域での役割の3つは、改定を待たずに見直せる

ガイドラインが改定されても、会社のBCPに書くことの基本は変わりません。検討会の論点のうち、中小企業がすぐに見直せることは次の3つです。

  1. 社長に連絡がつかないときの決め方。 誰が判断を代わるか、資金の支払いを誰が決められるかを、順番で書いておきます。体制の書き方は「中小企業でBCPを作る体制」で扱っています。
  2. 仕入先・外注先が止まったときの代わり。 代わりの調達先と、切り替えたあとに取引をどう戻すかを書いておきます。考え方は「仕入先が被災したときに備える」にまとめています。
  3. 地域での役割。 所在地の市町村と結べる協定や、帰宅困難者への対応など、自社が地域で担えることを確かめます。

自社の所在地で想定されている揺れや浸水は、拠点リスク確認で確かめられます。防災庁の発足後に出る指針や、事業継続ガイドラインの改定は、当サイトでも内容を確かめて記事に反映します。