大地震は、ドライバーが道路の上にいる時間帯にも起こります。事務所にいる従業員の安否は顔を見て確かめられますが、運行中のドライバーは離れた場所にいて、電話もつながりにくくなります。そのうえ、道路の損壊や交通規制で、戻ってくることも簡単ではありません。

この記事では、法令と国の指針が事業者に求めていることを確認し、走行中の行動、安否確認の手順、運行の停止と再開の基準を順に整理します。どれも、発災後に考えるのでは間に合わないため、運行管理の規程として平時に決めておく内容です。

法令と国の指針が事業者に求めていること

貨物自動車運送事業輸送安全規則第11条は、貨物自動車運送事業者に対し、異常気象その他の理由により輸送の安全の確保に支障を生ずるおそれがあるときは、乗務員等に対する適切な指示その他輸送の安全を確保するために必要な措置を講じなければならないと定めています。同規則第20条第1項第15号は、この措置を講ずることを運行管理者の業務の一つとしています。

国土交通省の「運輸防災マネジメント指針」(令和5年6月)は、運輸事業者が自然災害への対応を運輸安全マネジメントの一環として進めるための指針です。指針は地震について、発生の予測が難しく直前の準備ができないため初動対応が極めて重要であり、建物の倒壊と交通の途絶を考慮して、被災状況に応じて迅速に対応できるよう計画しておく必要があるとしています(6(1)①)。

体制については、次のような点を挙げています。

  • 災害対策本部の立ち上げと緊急参集について、たとえば震度6強以上の場合は招集の連絡がなくても自動的に本部を立ち上げるなど、あらかじめ基準を定めておく(3(1))
  • 経営トップが参集できない場合の代理を指定し、社外からも参画できるようICTを活用し、通信手段を代替のものを含め複数用意する(3(1))
  • 社内の緊急連絡網を、携帯電話やスマートフォンの電話番号リストなどに入れていつでも取り出せるようにし、人事異動などを踏まえて常に最新にしておく。複数の通信・連絡手段を確保し、訓練で実効性を確かめる(3(2)②)

また指針は、利用者の安全を確保するために事業をいったん中止する経営判断が必要になる場合もあり、この点からも自然災害への対応には経営トップが関わる必要があるとしています(2(4))。運行の停止は、現場の判断に任せるのではなく、会社として決めておく事項だということです。

走行中に大きな揺れが起きたときの行動

神奈川県警察は「大地震発生時のドライバーの心得」として、次の行動を示しています。走行中に大地震が起きると、パンクしたような状態になってハンドルをとられ、運転は大変危険だとしています。

  1. ほかの車両に衝突したり追突されたりしないよう注意し、交差点を避けて道路の左側に寄せて停止する
  2. 停止後は、地震情報・交通情報を聞いて、その情報に基づいて行動する
  3. 車両を置いて避難するときは、できる限り駐車場や空地など道路外に停止させる
  4. やむを得ず路上に置いて避難するときは、道路の中央部をあけて左側に停止させ、エンジンを切り、エンジンキーを付けたままにし、窓を閉めてドアはロックしない
  5. 津波から避難するためやむを得ない場合を除き、避難のために車両を使用しない

走行中に緊急地震速報を聞いたときは、あわててスピードを落とさず、ハザードランプを点灯して周りの車に注意を促し、急ブレーキをかけずに緩やかに速度を落とし、大きな揺れを感じたら道路の左側に停止するとされています。

あわせて、緊急交通路などで通行の禁止が行われたときは、その道路の区間にいる運転者は、速やかに車両を区間の外へ移動しなければならず、難しいときは、できる限り道路の左側端に沿って駐車するなど、緊急通行車両の通行の妨げにならない方法で駐車しなければなりません(災害対策基本法第76条の2)。警察官の指示を受けたときは、その指示に従います。規制される道路の範囲は「緊急輸送道路と大規模災害時の交通規制」で整理しています。

重要度 高

車両を離れて避難するときは、積み荷や車両よりも自分の身の安全を優先するよう、会社としてドライバーに明示しておいてください。国土交通省の物流BCPのガイドラインは、荷主と物流事業者のBCPに、物流従事者の安全確保が最優先であることを記載するよう求めています。

これらの行動は、ドライバー個人の知識に任せず、乗務前の点呼や教育で繰り返し伝えます。車両に積んでおく携帯用のカードに書いておくと、揺れの直後でも確かめられます。

安否確認の手順

運行中のドライバーの安否確認は、事務所の従業員の確認とは分けて手順を決めます。

  1. その時点の運行状況を一覧にする。 運行中の車両、ドライバー、積み荷、おおよその位置を一覧にできるようにしておきます。点呼の記録や運行指示書と同じ様式で作っておくと、発災直後にすぐ使えます。
  2. 複数の連絡手段を順番に使う。 電話、メール、業務用の無線、デジタルタコグラフなどの車載機器、社内のチャットなど、自社で使える手段に順番を付けます。
  3. ドライバーから連絡する基準を決める。 会社からの連絡を待つのではなく、「県内で震度いくつ以上の地震があったら、停止後に自分から連絡する」と決めておくと、確認が早くなります。
  4. つながらないときの手段を決める。 災害用伝言サービスの使い方を、ドライバーと家族を含めて共有しておきます。
  5. 確認できた内容を記録する。 本人のけがの有無、車両と積み荷の状態、現在地、移動できるかどうかを、同じ項目で記録します。

総務省によると、東日本大震災の直後は、携帯電話事業者によっては最大で平常時の約50〜60倍以上の通話が一時的に集中しました。通信各社は、こうした混雑の影響を避けて安否を確かめるため、災害用伝言サービスを提供しています。

表1災害用伝言サービスの概要
サービス使い方主な条件
災害用伝言ダイヤル(171)171をダイヤルし、ガイダンスに従って、連絡をとりたい方の電話番号宛てに伝言を録音・再生する伝言の録音時間は1伝言あたり30秒以内。1電話番号あたり1〜20伝言まで登録できる
災害用伝言板携帯電話の公式サイトから、状態を選び、任意で100文字以内のコメントを登録する。確認は全国から電話番号で検索する1電話番号あたり最大10伝言まで登録できる。登録は被災地域内の携帯電話からのアクセスのみ
災害用伝言板(web171)インターネットで伝言を登録・確認する災害用伝言ダイヤル(171)と連携しており、互いに登録された伝言を確認できる

総務省「災害用伝言サービス」をもとに編集部作成。提供条件は災害ごとに通信事業者が設定し、告知する

会社の安否確認の仕組みを別に用意している場合でも、それが使えないときの予備として、どの電話番号宛てに伝言を残すかを決めておくと役立ちます。

運行を止める基準と、再開の判断

最後に、運行を止める基準を決めます。地震は予告なく起きるため、「揺れの大きさ」と「交通規制」を基準にします。基準の例は次のとおりです。震度などの数値は、自社の運行範囲に合わせて決めてください。

表2運行停止の基準の決め方(例)
状況基準の決め方社内の対応の例
運行範囲で強い揺れを観測した震度の値で決める。指針は本部を自動で立ち上げる基準の例として震度6強以上を挙げている全車両の新たな出発を止め、運行中の車両は安全な場所で停止して連絡する
県内の広い範囲で強い揺れ県警の交通規制計画では、あらかじめ決めた路線と、震度6強以上を観測した区域で、直ちに交通規制が行われる規制の範囲が分かるまで運行を再開しない
自社の拠点が被災した建物・設備・燃料の状況で決める拠点の安全確認が終わるまで、戻る車両の受け入れ場所を別に決める

運輸防災マネジメント指針(本部の自動立ち上げの基準の例)、神奈川県警察「大規模災害等発生時の交通規制計画」をもとに編集部作成。基準の段階と対応は編集部が作成した例

地震の後に大雨や強風が続くこともあります。国土交通省は、台風などの異常気象時について、トラック輸送の安全を確保するための措置を講じる目安を通達で定めています(令和2年2月28日施行)。

表3異常気象時における措置の目安(抜粋)
気象状況強さ輸送の目安
降雨時20〜30mm/h輸送の安全を確保するための措置を講じる必要
降雨時30〜50mm/h輸送を中止することも検討するべき
降雨時50mm/h以上輸送することは適切ではない
暴風時10〜15m/s輸送の安全を確保するための措置を講じる必要
暴風時15〜20m/s輸送の安全を確保するための措置を講じる必要
暴風時20〜30m/s輸送を中止することも検討するべき
暴風時30m/s以上輸送することは適切ではない
視界不良時視界が概ね20m以下輸送を中止することも検討するべき
警報発表時—輸送の安全を確保するための措置を講じた上、輸送の可否を判断するべき

国土交通省自動車局貨物課「台風等による異常気象時下における輸送の目安」(令和2年2月28日)別表をもとに編集部作成

この通達は、運送事業者が気象情報などから輸送を中止することとした場合には、直ちに荷主などへ報告することも定めています。国土交通省は、輸送を中止しないことを理由に直ちに行政処分を行うものではないとする一方、監査で輸送の安全を確保するための措置を適切に講じずに輸送したことが確認された場合には、行政処分の基準にもとづき処分を行うとしています。国土交通省の物流BCPのガイドラインは、この通達は異常気象時を対象としたものだが、異常気象以外の災害の予見時・発災時にも、ドライバーの生命・身体の安全を確保するため同様の対応を取る必要があるとしています。

再開は、規制と道路の状況を確かめてから

運行の再開は、交通規制の状況、通行できる道路、拠点と納品先の受け入れ態勢、ドライバーの状況を確かめてからです。神奈川県警察の計画では、規制は災害応急対策などの復旧の状況に応じて段階的に緩和されます。再開の判断をする人(運行管理者か、災害対策本部か)と、その人が不在のときの代わりを決めておき、荷主にも「どの条件がそろったら再開するか」を前もって伝えておくと、発災後に無理な運行を求められる余地が小さくなります。