台風が近づくと、建設会社では現場の養生と同時に、資材置場や重機置場の対策が必要になります。置場の資材が風で飛べば周辺の住宅や通行人に被害が及び、重機が浸水すれば、台風が過ぎたあとの復旧工事に使えなくなります。災害の直後は、自社の現場だけでなく、取引先や地域からも重機の出動を求められる時期です。

この記事では、国土交通省の建設工事公衆災害防止対策要綱と、気象庁が公表している風の強さの目安、クレーン等安全規則の定めをもとに、資材置場と重機の備えを、平時の計画から台風の通過後まで順に整理します。

荒天時の措置は、施工計画の段階で決めておく

建設工事公衆災害防止対策要綱は、建設工事で工事関係者以外の第三者(公衆)に被害を与えないための基準で、令和元年9月2日の改正で「荒天時における備え」が加わりました。

要綱の土木工事編と建築工事等編には、どちらにも「荒天時等の対応に関する検討」という項目があり、施工者は、工事着手前の施工計画を立てる時点で、強風、豪雨、豪雪時の作業中止の基準を定めるとともに、中止時の仮設構造物、建設機械、資材等の具体的な措置を定めておかなければならないとされています。

つまり、台風が来てから考えるのではなく、「どの段階で作業を止め、そのとき資材と機械をどうするか」を、計画書の一部としてあらかじめ書いておくことが求められています。要綱にはこのほか、次のような定めもあります。

  • 作業場の内外を整理整頓し、民地などに隣接した作業場では、建設機械や材料の仮置きに十分配慮して、緊急時に支障とならない状態にしておく(土木工事編 第14)
  • 作業場を区分するさく等は、風等により転倒しないものでなければならない(土木工事編 第15)
  • 作業場の周囲の仮囲いは、強風等により倒壊することがないよう十分に安全な構造とする(建築工事等編 第21)
  • 可燃性塗料や油類などの危険物は、関係法令に従って適正に保管する(建築工事等編 第19)

資材置場は工事現場とは別の場所にあることが多いものの、置いている資材や機械の性質は現場と同じです。現場で決める荒天時の措置と同じ考え方で、置場ごとの措置も決めておくと、社内の基準がそろいます。

風の強さと、置場や仮設物で起こりうること

気象庁は、平均風速の段階ごとに、人や建物にどのような影響が出るかの目安を「風の強さと吹き方」として公表しています。このうち、資材置場や仮設物に関わる部分を表1に抜き出しました。

表1平均風速の段階と、資材置場・仮設物に関わる影響の目安
予報用語平均風速(毎秒)人への影響屋外・建造物の様子(抜粋)
やや強い風10メートル以上15メートル未満風に向かって歩きにくくなる。傘がさせない樹木全体が揺れ始める。樋が揺れ始める
強い風15メートル以上20メートル未満転倒する人も出る。高所での作業はきわめて危険看板やトタン板が外れ始める。屋根瓦・屋根葺材がはがれるものがある
非常に強い風20メートル以上25メートル未満何かにつかまっていないと立っていられない。飛来物によって負傷するおそれ固定されていないプレハブ小屋が移動、転倒する。看板が落下・飛散する
非常に強い風25メートル以上30メートル未満同上看板が落下・飛散する。道路標識が傾く
猛烈な風30メートル以上35メートル未満屋外での行動は極めて危険固定の不十分な金属屋根の葺材がめくれる。養生の不十分な仮設足場が崩落する

気象庁「風の強さと吹き方」をもとに編集部作成(一部の欄を抜粋)

気象庁の注記では、平均風速は10分間の平均、瞬間風速は3秒間の平均で、瞬間風速は平均風速の1.5倍程度になることが多いものの、大気の状態が不安定な場合などは3倍以上になることがあるとされています。また、風速は地形や周りの建物に影響されるため、その場所の風速が近くの観測所の値と大きく異なることがあります。

表1から読み取れるのは、平均風速が毎秒15メートルを超えるころには板材やトタンが外れ始め、毎秒20メートルを超えると固定していない仮設の小屋が動くおそれがある、ということです。資材の片付けや固定は、この段階に達する前、つまり作業ができるうちに終えておく必要があります。

クレーンについては、クレーン等安全規則に定めがあります。強風のため作業に危険が予想されるときは作業を中止しなければならず(第31条の2・第74条の3)、移動式クレーンが転倒するおそれがあるときは、ジブの位置を固定させるなどの措置が必要です(第74条の4)。屋外の走行クレーンは、瞬間風速が毎秒30メートルを超える風が吹くおそれがあるときに、逸走を防止する措置を講じなければなりません(第31条)。

浸水への備えは、置場の場所を知ることから

大雨に対しては、置場そのものが浸水するおそれがあるかどうかで、取るべき対策が大きく変わります。まず、国土交通省のハザードマップポータルサイトや市町村のハザードマップで、置場が洪水浸水想定区域や内水の浸水想定区域に入っていないか、入っている場合は想定される浸水の深さを確かめます。所在地の想定は拠点リスク確認でも調べられます。

浸水のおそれがある置場では、次のことを決めておきます。

  • 重機と車両の退避先:浸水が想定されない場所で、重機を置ける土地をあらかじめ確保しておきます。退避先までの経路が冠水しやすい道路を通らないかも確かめます。
  • 退避を始める時点:重機の移動には時間がかかり、回送車の手配も必要です。雨が強まってからでは移動そのものが危険になるため、どの情報が出たら動かすかを決めます。
  • 流れ出るおそれのある物:燃料、塗料、軽い資材、仮設トイレなどは、浸水すると流されて周辺に被害を及ぼします。高い場所へ移すか、固定します。

気象庁は令和8年5月29日から新しい防災気象情報の運用を始めています。大雨に関する情報は「レベル2大雨注意報」「レベル3大雨警報」「レベル4大雨危険警報」のように、警戒レベルの数字を付けた名称で発表されます。社内の基準も、この名称で書いておくと当日の判断が早くなります。

注意

置場が浸水し始めてから重機を動かそうとすると、運転する人が水に巻き込まれるおそれがあります。退避の判断は「水が来る前」に置き、間に合わなかった場合は機械をあきらめて人が離れることを、社内の決まりとして明記しておきます。

台風の接近から通過後までの段取り

気象庁の資料では、早期注意情報で5日先までの警報級の現象の可能性が、時系列情報で警報・注意報に先立って翌日までの見通しが(毎日4回)発表されるとされています。これらを使うと、次のように段取りを前もって組めます。

  1. 数日前(早期注意情報で警報級の可能性が示されたとき)。 置場ごとに、固定・片付けが必要な資材と、退避が必要な重機を洗い出します。回送車や作業員の手配を始めます。
  2. 前日(時系列情報で警報級の時間帯が見えてきたとき)。 軽い資材や板材、シート類を片付けるか、結束して固定します。仮囲いやさく、看板の固定を確かめます。浸水のおそれがある置場の重機を退避させます。
  3. 当日の作業中止前。 移動式クレーンは、転倒のおそれがあればジブの位置を固定するなど転倒を防ぐ措置をとり、作業を終えます。燃料の残りが少ない機械は、通過後にすぐ使えるよう給油しておくことも考えます。
  4. 通過中。 置場の見回りは行いません。風や雨が強いなかで人が置場に行くこと自体が危険です。
  5. 通過後の点検。 置場と仮設物の被害、資材の飛散の有無を確かめ、飛散した資材が周辺にあれば回収します。瞬間風速が毎秒30メートルを超える風が吹いた後に屋外のクレーンで作業するときは、あらかじめ各部分の異常の有無を点検することがクレーン等安全規則第37条で定められています。大雨の後に明り掘削の作業を行うときは、地山の浮石やき裂、湧水の状態を点検者に点検させる定めもあります(労働安全衛生規則第358条)。

段取りの各段階で「誰が」「どの置場を」担当するかを一覧にしておくと、台風のたびに同じ手順を繰り返せます。1回ごとに、間に合わなかったことや被害が出た箇所を書き足していくと、置場ごとの弱点が見えてきます。こうした段取りは、会社のBCPの風水害の項目や、事業継続力強化計画の事前対策として記載することもできます。